活動計画 ~赴任から半年を経て~
さて、気がつけばもう赴任から半年。任期の4分の1が終わってしまいました。早いものです、ホント。
一時期やる気の出ない時期はありましたが、最近はまたやる気が復活し、精力的に動き回っています。
ちなみに、ここへ来て半年、一度も体調を崩したことはありません。(1日だけ微熱が出て寝たような...。)お腹の調子も万全で、無殺菌牛乳、10日間放置してヨーグルトになった牛乳、半熟卵、雨水、畑で拾った果物、川で獲った野生の果物…今のところ無敗です。
本題に入りましょう。半年経ったら「活動計画書」なるものをJICA事務所に提出する必要があります。
現地のJICA事務所で教わったことですが、協力隊の活動というものは「Want」「Need」「Capacity」の3つの要素から成り立ちます。
Wants:これは隊員が活動としてやりたいことです。
Capacity:隊員や活動環境による実行可能性といったところでしょうか。
Needs:配属先であったり、現地の人が隊員に求めるもの、「ニーズ」です。
これら全てが重なるところにあるのが隊員の活動になのだ、という説明をブリーフィングで受けました。
▲JICA事務所で頂いた資料をもとに作成。
つまり、隊員はしたいことが全て出来る訳ではありません、ニーズに必ずしも応えれる訳ではありません、そして実行可能性にも制限されるということでしょう。
そう考えると難しいですよね、どんな活動するか、なんて。
さて、今回は僕の活動計画について、このWants、Needs、Capacityという3つの視点から分析しながら紹介したいと思います。
1.NERICAの導入・普及
NERICAとはNew Rice for Africaの略。他の稲より早く育って畑で育つ「陸稲」なんです。アフリカでは多くの地域で専門家やボランティアがNERICAの導入に勤しんでいます。
まだ稲作の行っていない任地、シハ県に導入しようというのがこの活動の目的です。
▲写真はイメージです。実際の任地の写真とは異なります。(Moshi, Kilimanajro Agriculture Technology Centre にて。)
Wants:NERICAに関して、実はあまり詳しい訳ではありませんし、稲作を普及させたいと考えていた訳でもありません。何気にJICAの稲作専門家から籾種を頂いたのがきっかけで始まった活動です。
Capacity:稲作の行っていないシハ県では、雨季の雨を利用してNERICA1という品種の米を栽培することになりました。稲作が行われていないので、品種が混ざってしまうことがないところが安心です。
Needs:さて、現地の農民の反応ですが、これが良好!配属先の農業課でも、稲作を導入しようと考えていたところで、グッドタイミングと言えます。トウモロコシ栽培に偏っていること、トウモロコシ食に飽きてきていること、「新しい農産物」に非常に強い興味を示すことなどを考えても、ニーズは大きいと言えます。
以上を見るに、NERICAの普及は「Needs」に特化した活動であることが言えます。
2.コーヒー有機栽培プロジェクト
「キリマンジャロ」コーヒーの栽培地であるキリマンジャロの農村。赤く綺麗な実がなるコーヒーは病虫害に強くはありません。虫食いがあれば売ることは出来ません。
なので農民たちは結構農薬を使うんです。ただ、その農薬が体に悪い。それを農民も分かってるけど、収穫量の問題で、農薬を使わずに栽培することを恐れているんです。
▲熟したコーヒーの果実は鮮やかな赤色に染まります。
Wants:大学時代に調査を行っていた農村は、日本にキリマンジャロコーヒーをフェアトレード商品として輸出しています。
(参照URL https://www.kyowas.co.jp/torikumi/kyoiku_rukani.html 「Kyowa's Coffee の取り組み」)
まあその関係でキリマンジャロ山中のコーヒー栽培に関してはかなり詳しくなりました。なので任地に来たらコーヒーに関する活動を是非やってみたいと思っていたのが僕の思いです。
Capacity:任地であるシハ県では、有機農業の普及を推進するNGOがあります。オーガニックコーヒープロジェクトも行っているようです。そこでそのNGOと協力して任地でコーヒーの有機栽培プロジェクトを立ち上げよう!というのが目的です。協力隊員単独では厳しいこともNGOや他の団体と連携することでCapacityは広がるものだと思います。
Needs:農業課のコーヒー担当である同僚も賛同してくれました。「コーヒーの有機栽培がしたい」「農薬が体に毒だから何とかしたい」と農民が口にするのも耳にします。コーヒー農家の農民グループもあると聞いています。価格が低迷する中、コーヒー栽培を諦める農民もいますが、十分なニーズはあると見ていいでしょう。
この活動はWants、Capacity、Needsが全て上手く重なっていると思われる活動です。2年間の活動の中で最も力を入れていきたい活動の1つです。
3.農業新技術導入・普及
・使われずに捨てられているもみ殻を利用して作る土壌改良剤「もみ殻くん炭」の生成。
・バケツやホース、靴紐など、廃材を利用した小規模な低コスト点滴灌漑技術。
・食酢に骨や卵の殻を漬けて作る液体肥料。
・発酵有機肥料「ボカシ肥」の作成。
…などなど
こういった技術を現地の農民に伝えていこうという試みです。
Wants:これらはJICAが協力隊員に対して行われる事前研修やこちらへ来てからJICA専門家から教わったものなど、色々あります。それら僕が知っている知識や技術を単に伝えたいという思いからの活動です。
Capacity:小規模農民を対象とした活動なので全て低コストで出来ることを原則にしています。僕が現時点で彼らに教えられることをまとめるだけなので活動としては比較的容易かと思います。単独で動くことになります。
Needs:「知識が欲しい」「肥料の作り方が知りたい」という現地の農民から生まれた活動です。
この活動は、Capacityに焦点を当てた活動です。僕が出来ることを全て行う、出しきるものは出しきってから帰りたいというだけの話です。
4.小規模ビジネスサポート
「コミュニティ開発」という職種内容の一つとして、「地域住民の生活向上」が挙げられます。現地の住民たちが自分たちで発展していこうとするのをサポートするのが望ましいかたちであるとされます。
協力隊員として強く働きかけるのではなく、住民である農民自身が農民グループを作って、蜂蜜や牛乳などの農産物の販売していこうという動きを助けることになります。
Wants:「コミュニティ開発」隊員のステレオタイプ的な活動の1つと言えます。「コミュニティ開発」隊員として農業を専門においた活動ではなくこういった活動もしてみたいです。
Capacity:農民グループはたくさん存在します。そしてキリマンジャロ地域ではビジネスが活発的に行われています。僕が出来ることは市場開拓の手伝いや、ビジネスに関してちょっとした助言くらいのものでしょうか。
Needs:実際に蜂蜜を作ってる農民グループの代表の方から頼まれたことがあります。「日本人である君の人脈から何とか市場を作れないか」と。農業の問題点の1つに市場へのアクセスが乏しいことが挙げられます。
5.格闘技術向上プロジェクト(おまけ)
同じくタンザニアで先輩隊員が柔道を指導している警察学校があります。そこでKOICA(JICAの韓国版)隊員がテコンドー指導を行っています。
で、一度一緒に練習したことがあります。20年以上テコンドーの稽古を行っている上にキックボクシングまで経験している彼の戦闘力は半端なものじゃありません。しかし僕の見立てでは、全盛期の頃の戦闘力を取り戻せば勝てない相手ではないと思っています。
まずは自宅の庭での型の稽古、基礎体力作り(ランニング、筋トレ)、ミット打ち(樹にミットをくくりつけて打ち込む)を十分に行い、動画を見てテコンドー・キックボクシングの動きを研究した上でイメージトレーニングを行い勝負に挑もうと思っています。
これに関してはまた別記事で詳しく書こうかと思います。
6. 最後に
以上、非常に長くなりましたが活動計画でした。活動計画どおりに活動が進むとは限りませんが、飽くまでも半年経った時点での予定です。半年という活動計画準備期間もちょうどいいものだと僕は感じました。
活動に関しては個人の力量ではなく、配属先・任地の活動環境によるものが非常に大きいような気がしています。活動環境に恵まれた僕としては何とか成果を残して帰りたいものです。
それぞれの活動に関してこれから定期的に報告していきたいと思います。