協力隊員活動記 ~キリマンジャロ山麓の農村で現地民と暮らした2年間の記録~

青年海外協力隊(2015年9月~2017年9月)でタンザニアに派遣されていました。キリマンジャロの見える農村で様々な課題解決に取り組みました。

本当に援助が必要な人に援助を届ける ~僕が協力隊活動の2年間で意識したこと~

1ヶ月も前のことですが、協力隊の活動紹介雑誌「クロスロード」3月号に僕の活動内容が掲載されました。

f:id:SHU-S:20180402155126j:plain
 ▲クロスロード2018年3月号
f:id:SHU-S:20180402155215j:plain
 ▲見開き1頁の特集。農業隊員特集ということで紹介して頂いた。

 

f:id:SHU-S:20180402155237j:plain
▲電話でのインタビュー後、編集者が文章を書くので見やすくて分かりやすい!

 

 

活動をこうして紹介していただくと、一定の成果が認められたという感じがして嬉しいですね。色んな人に助けられた2年間でした。派遣前・派遣前訓練・現地での活動支援してくれた方々、本当にありがとうございました。

 

 僕がそんな2年間の中で意識していたことは「成果にとらわれず信念を突き通すこと」です。これは決して「成果を残さなくてもいい」ということではありません。公人として派遣され、様々な支援を受けながら活動している以上、成果を残すことが求められるのは言うまでもありません。しかし、「成果」を意識し過ぎると信念を曲げて本末転倒になりかねないことに注意すべきです。僕の信念は「本当に援助が必要な人に援助を届けること」でした。

 

 「農村部での農家の収入向上」が目的の1つとされていた僕の活動としての成果を意識するなら県内に多数ある農民グループを対象に活動を行うことがやりやすく、基本だと思います実際に、農民グループは数多く存在し、肥料づくりも栽培技術も持っており、グループであれば資金面での補助もしやすいため、ドライフルーツ事業や農作物の販売事業など様々な案が浮かびました。具体的にこういうことを支援してくれと頼まれたことも多くありました。

 

 しかし、僕の信念は本当に援助が必要な人に援助を届けること。そして本当に援助が必要なのは農民グループの農家ではなく、村の中でも最貧困層に属する農家でした。農民グループに参加する農家たちは僕から見て「本当に援助が必要な人」ではありませんでした。実際、農民グループに参加している人は、経済的にも時間的にも比較的余裕のある人たちが多く、支援してほしい内容も、僕(JICAボランティア)がいるから、「何かしてくれるのであれば…」という前提で頼み事をしてくる人が多いです。一方、僕が活動対象にしていた最貧困層の人々は家事や農作業に追われ、農民グループに参加する時間的余裕もなく、現金収入が少ないので投資できる資金もありません。1日2食出来ればいい方で、1日1食(とチャイ)で生活しています。そういう人たちに限って、何かを支援してくれとは口にしないし、逆に僕にご馳走を振る舞ってくれたりする訳です

 

では、そんな生活をする農家の収入を上げるためにはどうすればよいのか。これが難しい…。そもそも現金収入が少ないから初期投資は出来ないし、まとまった時間を取るのも難しい…。農地も小さくて新たな作物の導入も難しい…。何度諦めて農民グループを支援しようと思ったことか…。しかし諦めずに解決策を探し続けた結果、少量で栽培しやすくかつ高価格で販売出来る農作物を見つけることができ、彼らの収入も上がりました。

 

最終的に活動成果として残せたものはありますが、決して莫大なインパクトではなかったと思っています。しかし、きちんと届けたい人に援助を届けられたという実感はあります。成果を出すことに固執し、農民グループを対象に活動を行っていたら彼らの収入を上げることは出来なかったと思います。もちろん、正解は1つではありませんし、僕自身反省もたくさんあります。ただ、結論として言いたいのは、自分が信じるものを貫けということです。自分の信じるものを徹底的に貫けるのが協力隊の2年間であり、現地の真のニーズに対応できるということこそが、国際協力における協力隊の強味なのではないかと思います。

 

 利益や数字、周りや組織・社会の目を気にしていては結局自分が何のために働いていて誰のための人生なのか分からなくなってしまいます。社会の歯車の一部になって働くのも大事だけれど、社会の枠に囚われない、新たな(自分らしい)ものの見方をすることこそが個人が持つ「価値」なのだと僕は思っています。夢を語る人だけで終わらないためにも、後はそれを社会に仕組みとして組み込むだけの力を持つために努力したいとは思いますけどね。