協力隊員活動記 ~キリマンジャロ山麓の農村で現地民と暮らした2年間の記録~

青年海外協力隊(2015年9月~2017年9月)でタンザニアに派遣されていました。キリマンジャロの見える農村で様々な課題解決に取り組みました。

任期修了1年後の任地訪問 ― 協力隊活動の成果はいかに!?

◯1年後の任地訪問 ― 活動の成果は果たして。。。

 2017年9月に協力隊の任期が終了…。それから約1年後の2018年8月、任地の村を訪れました!2年間暮らした村は、2年間関わった農家はどうなってるんだろうか…。
 ということで今回は、2年間の活動の詳細も含めて、任期修了1年後に訪問した任地で何が変わっていたか、何が残っていたのかを報告します。

 

◯満腹になった挨拶回り

 乗合バス「ダラダラ」に乗って、2年間暮らした村へ。バスを下りた時は、懐かしさと帰って来れたことの嬉しさで自然に顔が緩みました。「シュウ!帰ってきたのか!」とたくさんの村人が僕の帰りを歓迎してくれたのはやはり嬉しかったです。帰省後3日はお世話になった村人への挨拶回りで満腹になるまで現地食をご馳走になり、忙しい日々でした。

 

 

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 ▲仲の良かったキマンボ家族。花飾りを作って帰省を歓迎してくれた。

 

 

◯販売停止状態のミニトマト事業 ― 事業継続の難しさ

 挨拶も終わり気になるのは、活動のその後。まずは初期から取り組んでいたミニトマト事業。帰国前は車で1時間半離れたモシの町にあるカフェや600km離れた首都ダル・エス・サラームまで出荷していたのですが、需要が安定せずに販売停止状態…。

 まあ予想はしていましたが、難しいですね。安定的な販売のためには継続的な営業活動や農産物そのものの品質の高さが重要となってきますが、毎日の家事や家畜の世話などで忙しい農民にとっては継続するのは難しかったようです。在来品種のミニトマトは潰れやすく長距離出荷に向かないことも大きな原因の一つかとは思います。

 

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 ▲当時、経済首都ダル・エス・サラームまで出荷していました

 

 やはり1年間、中心になって動いたボランティアがいないと事業は継続しないのか…と肩を落としていたところ…ありました!継続していたミニトマト販売!

 

 僕が対象にしていた農家は、村の中でも貧困層。母子家庭で子どもを何人も育てている彼女と一緒に、モシの町で、スーパーやレストランを巡って一緒に営業活動をしました。その彼女曰く、未だ継続してミニトマトをモシのスーパーに運んでいるとのこと。それだけでなく、モシに行った際に様々なスーパーやレストランに営業しているとのことです。一緒に営業回りをした効果があったようで、嬉しいですね。

 

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 ▲町のスーパーで販売されるミニトマト       ▲販売用ミニトマトの選別作業

 

 非常に小さな小さな成果ですが、こうして継続しているものがあると何とも言えない達成感と嬉しさがあるものです。

 

 

◯爆発的に普及したイチゴ栽培 ― 活動の中で一番の成功例!?

 帰国前、ミニトマトと合わせて普及・栽培指導・販売事業を進めていたものが「イチゴ」です。

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▲キリマンジャロ山麓の気候に合っていたようです

 

 イチゴという果物を全く知らない農家にイチゴの苗を配って栽培してもらう、と同時に販売先を探して営業活動をしていました。そして、モシ(村から車で1.5hの町)のカフェに契約販売していました。しかし、ミニトマト同様イチゴの販売も停止状態。高価格のイチゴのターゲット層は主に外国人。そして雨季と乾季が明瞭なタンザニアでは、外国人観光客の数は時期によって大きく変動します。そのためか、需要が安定せず、最初は珍しがって買ってくれてはいましたが、継続はしなかったようです。

 

しかし、このイチゴ栽培。果物の販売こそ停滞していますが、僕が最初に3つの苗を上げた近所の農家は、それから地道に苗を増やし続けなんと100株以上に増えていました。今や県内のイチゴ栽培のモデル農家となり、県庁の農業オフィサーを始め様々な人が彼の畑を訪れるようになりました。そして彼が力を入れたのは「苗の販売」です。イチゴは親株から出たつる(ランナー)から子株の苗を作ることが出来るのです。

 

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 ▲今やイチゴ栽培には誰よりも詳しいンマリさん。

 

 

 こうしてイチゴ栽培を学びたい訪問客に対して苗を販売を進めた結果、これまでなんと1,000株以上も販売したと言います。苗一つあたり3,000タンザニア・シリング(≒150円)で販売したというので、その経済的効果は3,000,000タンザニア・シリング(≒150,000円)。経済的効果も社会全体に与えたインパクトを考えてもイチゴ栽培が最も成功した活動だと言えるでしょう。

 

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▲大量の販売用イチゴ苗

 

 

 

◯JICAのボランティア事業を考える ー 継続の難しさ

「自分がいなくなっても継続する活動」というのを2年間で確立させることの難しさを身に染みて感じました。現地のニーズや価値観を理解するのに半年以上は絶対必要ですし、言語の壁や地域社会や同僚との人間関係の構築なんかを考えると、本当に意味がありそうなことが出来るのは、活動環境やボランティア自身の頑張り、運などもありますが、せいぜい1年後、1年半後がやっとです。
 そこから任期修了までの僅かな期間に継続性を考慮して、同僚や現地農民に全てを託してくることなど…相当難しいと思います。そんなこともあって、今回の「1年後の帰省」は村の人にとってもすごく良かったと思っています。
 ということで、次回は「1年後の帰省ー活動のフォローアップ」について書きたいと思います。